山崎先生よりのメッセージ

国立がん研究センター中央病院
皮膚腫瘍科 山﨑直也 先生

シェスタ会を応援します。

 乳房外パジェット病は英国の外科医Paget博士の名前のついた珍しい病気で、広い意味で皮膚がんの一種です。
 この腫瘍では、がん細胞はみられますが、それが表皮という皮膚の中でもとても浅いところで生まれ、しばらく表皮の中にとどまっていることも多い病気です。この病気の特徴として浅く広く拡がっていくものの進行がゆっくりであるためです。

 医学的にはがん細胞が表皮で生まれそれより一層深い真皮に浸潤している状態を皮膚がんと呼び、がん細胞はあるものの表皮の中にとどまっているものを”前がん状態”と呼んでいます。
 前がん状態ではがん細胞は転移する力を持っていません。ですから乳房外パジェット病は”広い意味で”がんであっても早い時期にみつかれば前がん状態ですから、がんで命を落とすといった心配はないのですが、一方で外陰部やお尻の周りなど、患者さんにとってなかなか病院に行くのをためらうところにできるのでつい自己流で治療をしてしまったり、受診が遅くなったりして、本来前がん状態であったのに一歩すすんでしまい、本当のがんになってしまっている患者さんもたくさんおられます。
 この状態は乳房外パジェット病ではなく乳房外パジェット癌と呼ばれることもあります。

 ご自分が乳房外パジェット病と診断されたとき、どれほどのかたがこの腫瘍の名前をきいたことがあったでしょうか。おそらくほとんどのかたが初耳だったのではないでしょうか。
 一般に想像されるがんとは見た目もかけ離れていると思います。
 医者の立場からもかぶれやただれ、たむしといったよくある皮膚病にそっくりであるために初めて患者さんを診たときに乳房外パジェット病を疑う医者は非常に少ないのではないかと想像します。
 珍しい、希少がんと呼ばれる病気です。診断がついたとしても、情報が非常に少ない病気です。
 今、インターネット上では、調べれば調べるほど多くの情報に触れることができます。
その中には役に立つものもありますが、残念ながら患者さんを惑わす間違ったものがたくさんあるのもまた事実です。
 患者さんが正確な情報を得るため、また皆で協力して良い治療法を見出し、作り上げていくため、患者さんと医師の協力が必要であると思います。
 私は長年この病気の患者さんを診察してきてそれを非常に強く感じています。
 そして、今回新たに発足したシェスタ会という乳房外パジェット病の患者会の活動をぜひ応援したいと思っています。